患者さんの声の箱 「痛くないよ、痔の手術」
大阪肛門科診療所(旧 大阪肛門病院)の入院患者さんたちの手記をもとにしています。痔に悩んでいる多くの方たちへのメッセージがたくさん込められています。

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肛門科の選び方

肛門科を受診する場合、多くの方が以下のような理由で病院を選ばれているようですが、そんなに簡単に選んでしまって、本当に大丈夫でしょうか?


・ 便利だからとりあえず近くの病院で…
・ 大きな病院だから安心できそう…
・ 患者さんが多いようだからきっと良い病院なんだろう…
・ 外観や、ホームページの印象が良かったので…


人生において、大きな選択をする機会がいくつかあります。たとえば、受験、就職、結婚、マイホームの購入などですが、場合によっては“肛門科選び”も、その1つになるかも知れません。


「何と大げさな…」と思われるかも知れませんが、決して大げさではないのです。


もちろん、市販の薬で簡単に治る場合もあるでしょうし、どのような肛門科で治療を受けても相違なく完治できる疾患もあるでしょう。ですが、手術を必要とするような重症の患者さんにとっては、その医師の知識や技術によって、苦痛の度合いや術後の経過が異なる場合もあるのです。


ちょっと想像してみて下さい。
“不安や痛みの少ない治療、治癒後も適切なサポートのある生活”と、
“治療中・治癒後も不安の残る生活”とでは、
一生涯において随分大きな違いがあると思いませんか?


安易に肛門科を選んで後悔することがないように、結婚相手を選ぶようなつもりで妥協することなく、しっかりご自身でご判断されることをお勧めします。


では、どのようにして“安心して受診できる肛門科”を選べば良いのでしょうか?


肛門科というのは非常に専門性の高い領域であるにも関わらず、法律上は医師免許があれば誰でも“肛門科”の看板をあげることが出来ますので、その医師がどれぐらい肛門疾患の治療に精通しているかどうかに大きな差があります。


■ まずは、できるだけ多くの情報を集めましょう。


お身内の方や信頼のおける知人、実際に診察や手術を受けた経験のある方、または身近にそのような経験をした人がいる方、もしくは、親身になって相談にのって下さる掛かりつけのお医者さんなどから、いろんな経験談や、評判、地元の口コミ情報、治療実績、施設の沿革などの情報を集めましょう。


なかなか人には相談しづらいところもありますので、書籍やインターネットを利用することも1つの方法だと思います。病院のホームページには、医師の詳しい経歴などが掲載されている場合や、力を入れている診療科目についての情報もありますので、参考にできる部分もたくさんありますが、確実でない情報もたくさんありますので、慎重に判断することが大切です。


■ ここだと思える医療施設が見つかれば、勇気を出して早めに受診してみましょう。


診察の様子や、話し方などから、ある程度はその医師の知識、技術、経験、そして人柄などを伺い知ることが出来るかもしれませんし、同じ待合室の患者さんなどから、参考になるお話が聞けるかもしれません。


治療の方法については、ご自身が納得いくまで説明を受け、その医師を信頼して治療や手術を任せることが出来るかどうか、しっかりとご判断ください。


大切なことはその医師を信頼できるかどうかです。少しでも不安があれば、別の医療施設を受診してみることも必要です。


これから先は、適切な判断をして頂くための予備知識のような内容です。
説明が細かくなりますが、誤解が生じないように、きちんと最後までお読み下さい。




肛門科は外科の一領域ですが、専門性の高い科です。


肛門科というのは、外科の中の、消化器外科の一領域(一分野)です。内科の中にも消化器内科があり、その中には大腸を専門とする医師もいますが、手術をしない内科医には、手術治療の多い肛門疾患を専門にすることは困難です。ですから肛門内科という表現は、比喩・或いはなかば冗談として用いられる以外は、専門家の間では使われない表現です。


外科領域の説明   

では、大腸肛門外科医なら、誰でも肛門の治療や手術が同じレベルで出来るのかというと、そう簡単なものではありません。肛門病治療についての専門的な知識や技術を身につけるためのトレーニングが必要です。


というのは、肛門疾患については医学部教育においてほとんど学ぶことはありません。そして外科研修においては、大腸疾患は経験する機会があっても肛門疾患を診る機会は少なく、肛門を専門とする指導医のもとで学ぶ機会などはまずありません。大腸疾患のたくさん集まる施設と、肛門疾患が集まる施設は、違うのです。ですので、あらためて専門のトレーニングが必要となるわけです。


肛門病治療のトレーニングには、肛門疾患のたくさん集まる施設に勤務して経験を積むことが非常に有益です。手術見学や学会で勉強することも有益ですが、根本的に違います。


実際に勤務すると治療の難しい疾患を含めて、その施設の全貌を経験できます。


このような施設(社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター、松島病院、高野病院……)で行われているのは標準的治療なのですが、その内容は非常にハイレベルで洗練されたものです(いやむしろ、そのような施設で行われている治療であるために、それが標準となり、他の一般的な施設の目標となるのです)。


専門医は独立後も自己研鑽して様々なオリジナリティーを獲得して独自のスタイルを確立してゆく訳ですが、その施設での経験を基準に自己研鑽してゆくのが一般的です。



肛門科の専門医とは?


現在、日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医には、以下の3種の専門領域があります。


1. 内科・放射線科系(Ⅰ)
2. 外科・大腸領域 (Ⅱa)
3. 外科・肛門領域 (Ⅱb)



肛門科の専門医とは、
日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医のうち、外科系肛門領域(Ⅱb)を専門領域とする医師」を意味しており、全国で250名程度とごく少数で、非常に専門性の高い領域です。


この“肛門科の専門医”であれば大抵の場合は肛門疾患の治療に精通している医師であると思われますが、必ずしもその医師の技術を保証するものではありません
また、これとは逆に専門医としての認定を受けていなくても、有能でしかるべき技術を身につけている医師もいますので、あくまでも一つの目安としてお考え下さい


現在のところ、その医師が“肛門科の専門医”であるかどうかを、第三者が確実に知る方法はありませんので、「大腸肛門病学会の外科系肛門領域の専門医(Ⅱb)を持っておられますか?」と、その医師に直接たずねてみるしかありません。


ちなみに、日本大腸肛門病学会のホームページで大腸肛門病専門医の名簿が公開されていますが、2007年末現在では、各領域までは明記されていませんので、外科系肛門領域(Ⅱb)の医師であるかどうかの判断はつきません。また、女性医師は結婚後も混乱を避けるため旧姓を名乗ったり、読みにくい漢字の名前をひらがなやカタカナに変更して仕事上の名前としている場合もありますので、名簿を探しても氏名が見当たらないこともあります。(”佐々木みのり”もそうです。)


また、病院の待合室や診察室に“専門医取得証明書”などが貼ってある場合もありますが、最近の専門医取得証明書には「肛門科領域」と記載されなくなったので、何科の専門医であるのか分からない場合もあります。



肛門科の看板は、誰でもあげられる


これまでに述べたように、肛門科というのは非常に専門性の高い領域であるにも関わらず、肛門科の看板は医師であれば法律上は誰でもあげることができます。


例えば、手術をすることがない内科の医師でも肛門科の看板をあげることができるのです。そのような場合、手術が必要と診断されれば、適切な医療機関に紹介されることになるでしょうが、なかなか受診できずに悪化させてしまうことを考えれば、身近なクリニックなどで気軽に受診ができることは、痔に悩める人たちにとっては有難いことかも知れません。 (手術を受ける医療機関についても、任せきりでなくご自信でしっかり判断して下さい。)


では、看板の実例から見てみましょう。


1.○○肛門科

肛門科のみを扱う施設で、多くは肛門科の専門医です。また、肛門科の専門医をもっていなくても治療実績のある医師もいます。

2.○○肛門科・胃腸科


この看板がおそらく最も多いと思われます。このような場合、「肛門科の医師が大腸も診ている」、もしくは「大腸の医師が肛門も診ている」両方が考えられます。

3.○○内科・肛門科
  ○○外科・胃腸科・整形外科・放射線科・肛門科
  ○○肛門科・整形外科

1人の医師がいくつもの科を受け持っている場合と、それぞれに担当医が異なる場合があります。


4.○○病院 外科・肛門科

いわゆる大病院や総合病院の中にある肛門科です。これも肛門科の専門医が担当している場合と、外科の医師が担当している場合の二通りがあります。あるいは非常勤で、肛門科の専門医が担当する場合もありますし、命に関わる手術ではないために若手の外科医が執刀する場合などもあります。(しかし、決して簡単な手術ではありません。)



混んでいる病院が良い病院とは限らない


待合室にたくさん患者さんが溢れかえっていると「この病院は流行っているな~」と思われがちですが、施設の良し悪しを、「混んでいる」という理由だけで判断してもよいのでしょうか。


というのは、どのような頻度で通院しているのか(毎日通院~1・2週間毎の通院)、治療経過の良し悪しにより大きく混み具合は変化するはずだからです。


通院頻度は治療の方針により様々に変化しますので、一律の基準で考えることはできません。また、経過不良で通院している患者さんで混雑している施設でも、難しいケースが集まるハイレベルな施設かもしれません。


単に、その病院の本当の流行り具合を患者数で比べるならば、“初診(新患)患者数”で比べると良いと思います。初めてその施設を訪れている患者さんの数がどのくらいなのか? が大切なポイントではないでしょうか。


でも、流行っていれば良いのかというと、難しい問題なのです。


やっぱり大切なのは、「ご自身が納得できるかどうか」だと思うのです。



“最新”=“最善”の治療ではない


どんな世界にも「流行り」というものがあります。


昔は、痔核の手術といえばホワイトヘッドの手術が標準でした。どの施設でも、ごく普通に行われていました。ところが、術後数年たってから肛門の障害が出ることが分かり、今となっては「行ってはならない手術」となってしまいました。


当時の医者がこのような結末を予測したでしょうか。誰もが最善の手術法であると確信して行っていたに違いありません。皮肉な話です。


新しい治療法には20~30年後の肛門がどうなっているのか、というデータがありません。今は良くても年数がたつとどうなるか分かりません。副作用は?合併症は?肛門機能は大丈夫?といった心配が付きまといます。


ですから、必ずしも最新のものが良いものとは限りません。もちろん、何の問題も生じることなく、最善の治療となる場合もあるでしょうし、まだ、発展途上にあり結果が出てないとも言えます。


それらのリスクを充分に理解し、納得した上で治療を受けられている患者さんがどのくらいいるのでしょうか?


今、もてはやされている治療法が将来、肛門に弊害をもたらすようなことになったら、その責任は誰にあるのでしょうか?


治療を担当した医師?その治療を望んだ患者さん?それとも薬を売った製薬会社?それを許可した国?・・・・・どこかで聞いたような話ですね。
薬害AIDS、薬害肝炎、今問題になっていることも、当時は良かれと思ってした結果です。


「新しい治療法にはリスクがある」ことをよく理解した上で治療を受けられることをお勧めします。




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プロフィール

Author : dr.sasaki
大阪肛門科診療所(旧 大阪肛門病院)の肛門科専門医、
五代目院長の佐々木 巌と、
数少ない女性の肛門科専門医、佐々木みのり です。

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